出願―審査―公告(異議申立て)―登録。
審査において拒絶理由が発せられなければ、現状では出願から登録までは約3年以上を要しています。
商標およびサービスマークの出願に必要な事項および書類は以下の通りです。 (1)出願人の中国語と英語標記による住所および氏名(法人の場合は名称) (2)商標を使用する商品またはサービスおよびその区分 (3)委任状 (4)商標見本データ(5)優先権証明書(優先権を主張する場合)
商標法第6条は、「国が登録商標を使用すべきことを定めた商品は、必ず商標登録を出願しなければならず、登録の許可を受けていない場合は市場で販売してはならない」と規定しています。 人の健康および公的利益に関わる商品に対しては強制的に商標登録させる規制があります。 例えば、煙草製品などの分野においては、商標登録の許可を受けていない商品の市場への販売は禁止されています。
中国での商標出願は食品や服装などの生活用品関連分野のものが多いのが実情ですが、近年、サービス業分野の商標出願が多くなってきたという傾向があります。
及びません。固有の法律制度を有する香港、マカオには個別の出願が必要になります。
中国の商標審査基準では、「漢字」「平仮名」「カタカナ」「アルファベット表記」「ピンイン<中国普通語の発音表記>」は相互に非類似です。したがって「小新」の日本語名にあたる「クレヨンしんちゃん」やローマ字表記「CRAYON SHIN CHAN」などは、商標「小新」とは非類似であり権利侵害とはなりません。そのため、それぞれにおいて権利保護を受けたい場合は、それぞれの表記で出願することが必要です。
このような出願方式は他人の出願を排除する根拠にはなりますが、第三者によってこのうちの一つのみが使用された場合に権利行使が可能か否かが問題となります。日本と異なり商標使用の同一性の範囲は広くなく、権利行使ができない場合が生じます。この場合は実際使用の便宜性も考慮し各要素に分割して出願しておくことが好ましい方法です。
活字体のアルファベットとデザイン化されたアルファベットの識別性は多分に主観によるところがあります。現実に使用される態様での権利化が第1順位ですが、権利行使段階で類否判断に余地を残さないならば両方を出願しておくことか好ましい方法です。
中国市場における実際使用の形態によって決定すればよいと考えます。中国では広く「簡体字」が常用されており、日本語との互換性(=類否)の問題もあります。ただし、中国の商標審査基準では、「漢字」「平仮名」「カタカナ」「アルファベット表記」「ピンイン<中国普通語の発音表記>」は相互に非類似であり、社名商標をどこまで保護しておくかはコストを含めた企業戦略ですが、出願済の文字商標態様以外の商標が第三者によって出願・使用された場合は権利侵害を問うことはできません。コスト面から非現実的ですが万全を期するなら、重要商標については全ての文字商標態様で出願し、さらにその文字商標の類似範囲までを権利化することも選択肢としてあります。
商品の形態を立体商標で保護することは困難です。商品の外観形状に特徴がある商品であれば意匠専利を活用すべきです。商品パッケージに商標としての顕著性があれば商標によって保護することは可能です。現実に商品パッケージの図形商標が模倣品対策上の武器となった事例があります。
中国商標審査においてカタカナ・平仮名は図形として認識されます。本件の場合、中国国内での実際使用において製品にカタカナ社名しか用いない場合でも、模倣品対策には行使する権利が必要であり、その意味で中国登録は必要です。基本的に中国の一般の消費者にはカタカナは文字としては認識されないと考えなければなりません。 中国において商標出願する場合は、カタカナ社名であっても出願人の「中国語表記」が必要であり、これに対応した「簡体字」の商標出願が行われるのが一般的です。中国国内での実際使用の状況によって決定すべきですが、カタカナ・簡体字・アルファベット表記等を使用する可能性があるなら、それぞれ個別に商標出願しておくことが望ましい手段です。これらは「必要性」の問題ではなく模倣品対策上の「戦略」です。
中国語漢字には全て何らかの「意味合い=観念」があります。仮に複数の漢字からなる合成語であっても個別の漢字を組み合わせた全体としての「意味合い」を有することになり、その結果中国の一般大衆によいイメージを想起させるものであることが大切です。また、地方弁の発音で忌み嫌われる意味合いを想起させないものであることも考慮すべきです。漢字の選択ミスで商品が全く売れなかったケースもあります。
片仮名や英文字に対するあて字(日本語漢字)がある場合は、その当て字を現地代理人に伝えます。当て字のない場合は、読み方(発音)を現地代理人に伝え、意味の良い中国語の当て字を提案してもらうか、又は、現地代理人に意味を伝えて、対応する意味を持つ中国語を提案してもうとよいでしょう。
商標が外国語のみからなるものである場合や、商標中に外国語を含む場合には、その外国語の意味についての説明を要求されます。その説明は審査において考慮されますが、審査官の判断を拘束するものではありません。尚、その説明は公報には掲載されません。
中国商標局が発行する「類似商品及び役務区分表」に基づき、指定商品・役務を具体的に明記する必要があります。商品及び役務名の上位概念による包括的表示は認められません。
新製品・新サービス等のようにその指定商品・役務名が「類似商品及び役務区分表」に例示されてない場合には、その新しい商品・役務について詳細に説明する必要があります。パンフレットや商品説明書等の参考資料を出願時に提出した方がよいでしょう。これらの商品・役務名は「積極表示」と呼ばれ、その表示及びその区分が適切であるかどうかについて、方式審査の際に審査されます。内容によっては「規定にない」として商標局から補正指示が出されることがあります。
指定商品の表示を明確にするような補正を行うことができます。補正により出願時の商品・役務の区分に属さないものとなる場合には、削除しなければなりません。なお、中国では、商標の分割出願の制度はありません。 新商品の場合、それが同一区分に属することが明らかな場合には、関連資料を添付し詳細な商品説明を行うことが可能です。
基本的に中国の商品・役務の分類表に準拠して個別商品・役務が記載されていれば補正指令はありません。中国商標出願での指定商品・指定役務は、中国国際分類表による「個別商品・役務」の記載が必要であり、上位概念による包括的な指定商品・指定役務の記載はできません。
主力商品はもちろんのこと、権利範囲の公示媒体である商標公報などに掲載しておきたい商品・役務については全て指定するべきです。重要度の低い商品・役務についても防衛的に指定する場合があります。審査段階における指定商品又は指定役務の類似の判断は、「類似商品及び役務区分表」に基づいて画一的になされます。「類似商品及び役務区分表」には、各商品又は役務の区分において、類似する商品又は役務を括った「類似組」(以下、「組」という。)がいくつか記載されています。原則として、商品又は役務に関する類似判断は組ごとに行われています。この原則を利用すれば、効果的な商品・役務の指定をすることができます。具体的には、保護したいアイテムを各組に点在するように指定するのです。そうすることにより、指定商品又は役務が含まれる組においては、原則として、他人の同一又は類似商標の使用・登録を防止できます。但し、組によっては、例外もあるため、具体的な指定方法については現地代理人のアドバイスを受けるべきです。
商品の普通名称にあたる文字を含む商標は、指定商品をその普通名称が表わす商品に限定すべきです。この場合、その普通名称に該当する商品以外の商品を含めることはできません。
中国商標法第9条には、「登録出願にかかる商標は、顕著な特徴を有し、容易に識別でき、かつ他人の先に取得した合法的権利と抵触してはならない。」と規定されています。ここで定められている「顕著な特徴」とは、識別標識として機能し得る個性的な特徴を指します。具体的な判断基準は公表されていませんが、審査官は通常下記の基準に基づき、「顕著な特徴」の有無を判断しているようです。 a.極めて簡単な標章であるか否か。b.商品・役務の普通名称であるか否か。c.指定商品・役務の品質等を単に表示するものであるか否か。 d.長期間の使用によって識別力を有するに至っているか否か。e.商標全体として識別力があるか否か。以上は、出願商標に接する一般的な需要者・取引者を想定して判断されます。
商標が非類似であることを主張したい場合には、拒絶査定通知を受領した日から15日以内に、商標評審委員会に再審を請求することができます。同時に、引用された他人の登録商標を取消す請求を行うこともできます。この15日以内という期間は、中国国民のみならず、外国人にも同様に要求される法定期間です。期間の延長は認められませんのでご注意下さい。一方、一部の商品のみ拒絶される所謂部分拒絶査定の場合では、再審の請求をしなければ、拒絶査定通知書において審査官により具体的に指摘されている抵触商品は自動的に削除したものとみなされ、審査官がそれ以外の商品での登録を許可することになります。出願中の商標が引用されることもあります。
a.商標の類似の判断 中国では、商標の類似は、指定商品等の取引状況を踏まえて、比較する商標の称呼、観念、外観に基づき、消費者が両者を誤認混同することなく区別可能であるか否かの観点から判断されます。この基本的な考え方においては、中国と日本との判断方法はほぼ同じです。しかし、中国では、特に中国語の文字からなる商標の場合、称呼が同一でも観念が異なれば非類似と判断される場合があります。つまり、観念重視で判断されます。b.商品の同一性及び類似の判断 審査段階においては、「類似商品及び役務区分表」に基づいて画一的になされます。しかし、商標侵害の場合における判断は、この基準に拘束されません。同一商品とは、名称が同一の商品又は名称は異なるものの意味する商品が同一の商品をいいます。一般には商品の原料、形状、性能、用途等の要素及び取引習慣を勘案して判断します。商品の原料、外観が異なっても、消費者からみて両者に実質的同一性があれば同一の商品とみなされます。類似商品とは、原料、機能、用途、外観及び販売場所等の面において一定程度の共通点を有し、同一又は類似の商標が使用されれば、容易に誤認混同を惹起し、消費者に同一の生産者が製造した商品であるとその出所について誤認誤認させるものをいいます。
中国の商標法第10条には「公衆に知られた外国地名」は商標登録をすることができないと規定されています。したがって、中国の公衆に知られていない外国地名であれば、商標として使用・登録することができます。 ただし、そのような商標が登録された場合は、登録の取消を請求することができます。しかし、その地名が有名であり、中国の公衆に知られていることを証明する資料を提出する必要があります。又は、その地名が有名であることを知りながら不正手段によって商標登録させたという証拠を提出する必要があります。ここでいう公衆には中国における消費者や当該地域の産物を輸入販売する業者等を含みます。一方、その地名の使用に対しては、それが登録商標の詐称(未登録であるにも拘わらず登録商標であると虚偽の表示をする場合など)に該当しない限り、商標法に基づく法的措置は採れません。
ありません。
中国では、登録商標を継続して3年間使用しなかった場合、何人も商標局に関連情報を提出し、当該登録商標の取消しを求めることができます。この不使用取消は審判ではなく、商標局に対する取消請求です。商標局はその不使用取消請求を受けたことを商標権者に通知します。商標権者は通知を受け取った日より二ヵ月以内に、当該商標の取消請求が提出された日前(請求日から遡って三年以内)における商標使用の証拠資料又は不使用の正当理由を提出しなければなりません。期間内に使用の証拠資料を提出せず又は証明資料に証拠力がなく、且つ不使用の正当理由がない場合は、商標局はその登録商標を取消します。ここでいう商標の使用の証拠資料とは、商標権者が登録商標を使用する場合の証拠資料と商標権者が他人に登録商標の使用を許諾した場合の被許諾者による証拠資料を含みます。登録商標の取消しに不服がある場合は、当事者は商標評審委員会に再審を請求することができます。商標評審委員会の決定に不服がある場合は、通知を受領した日から30日以内に、当事者は人民法院(裁判所)に提訴することができます。
マドプロ経由の出願は先ず本国出願を条件とし、本国出願が拒絶されれば全ての指定国で登録できないという問題点があります。この問題がクリアーできればマドプロ経由出願は効果があります。
一般論として、無審査の意匠専利を活用するか、著作物であれば著作権法を活用するしかありません。「クレヨンしんちゃん」のキャラクター商標事件では、著作権が有効に機能しました。 そうでなければ、当該商標の大規模使用によって中国国内で一定の影響力を有する次元にまで仕立て上げる手段もありますが、これによる権利行使は難しいと考えます。
国家工商行政管理総局による商標法運用の強化は、既出願案件について適用されることはなく、通達の発効日以降の出願に適用されます。したがって、過去の個人名義の出願に対する異議事件などには何ら影響はありません。なお、この運用基準は中国人による出願の場合にのみ適用され外国人出願には適用されないため、内外不平等の議論が起きています。
基本的にこのような事態が生じること自体、中国における商標管理の在り方が問われるべきでしょう。この場合、異議申立又は登録済であれば取消請求することになりますが、その要件は決して軽微なものではありません。 上記の場合、異議申立中であれば即刻取引停止には至りませんが、登録済みであれば取消をしない限り権利は有効であり、権利行使されるリスクを負わなければなりません。