中国では、登録表示は義務付けられていません。 登録商標を使用する場合、商品、商品の包装、使用説明書、又はその他の付随するものに「登録商標」又は登録マークを表記することができます。その登録マークはRの外を○で囲んだものとなります。登録マークの表記場所は商標の右上又は右下が一般的です。
商標登録の存続期間は、登録日を起算日として10年間です。存続期間更新の申請により10年毎に更新をすることができます。更新の申請は、存続期間満了前6ヵ月以内に行わなければなりません。ただし期間満了後6ヵ月以内であっても更新の申請を行うことが可能ですが、滞納金を払う必要があります。更新申請手続の際には、商標局に「商標更新申請書」を提出しなければなりません。
標準的な書体で登録された商標を、多少書体を変更して使用することは可能です。具体的な判断基準は定められていませんが、実務的に標準的な書体から常用書体(例えば宋書体、黒書体、楷書体)へ変更して使用することは許容範囲と思われます。一方、標準的な書体から字形変化の大きい書体(例えば草書体、行書体、隶書体)へ変更して使用することは登録商標の使用とは認められない場合があります。中国語と英語の二段併記で登録を受けた場合、何れか一方のみの使用は登録商標の使用とは認められません。中国語と英語が、カタログ等において、別々に使用することも登録商標の使用とは認められません。 中国語と英語がそれぞれ独立して登録を受けている場合は、中国語と英語を併記して一つの商標として使用することは可能です。登録商標の使用と認められるかどうか疑わしい商標の使用に対しては、登録表示は避けるべきです。
中国の商標法においては、ライセンサー(商標権者)とライセンシー(商標使用者)に対し、商標ライセンス契約に関する義務を規定しています。 商標法の第40条第1項では、品質監督義務について「許諾者は被許諾者がその登録商標を使用する商品の品質を監督しなければならない」と規定し、品質保証義務について「被許諾者はその登録商標を使用する商品の品質を保証しなければならない」と規定しています。又、同条第2項では、使用許諾に係る商品についての表示義務に関して「他人の登録商標を使用することを許諾されているときは、その登録商標の商品に被許諾者の名称及び商品の原産地を明記しなければならない。」と規定しています。さらに、同条第3項では、ライセンス契約書の届出義務について「商標使用許諾の契約は商標局に届出なければならない」と規定しています。また、商標法実施条例の第43条では、ライセンス契約書の届出期限について「商標登録人が他人にその登録商標の使用を許諾する場合は、許諾者は契約締結日から3ヵ月以内に許諾契約書の副本を商標局に登録のために届出なければならない」と規定しています。商標法実施条例の第44条では、使用許諾に係る商品などへの表示義務に違反する場合は「工商行政管理部門は期限を定め是正を命じる。期間を過ぎても是正しなかった場合は、その商標標識を没収し、商標標識と商品が分割しがたい場合は、商品を同時に没収し、処分する。」と規定しています。最後に、ライセンス契約書の届出義務違反については、2001年の改正商標法では罰則は規定されていませんが、中国の司法解釈では「使用許諾契約が届出されていなくとも契約の効力は原則として有効であるが、届出のないときは第三者対抗要件を有しない」としています。
商標権者は商標使用許諾契約を締結することを通じて、他人に登録商標の使用を許諾することができます。但し、許諾者は商標が被許諾者に使用される商品の品質を監督しなければなりません。被許諾者も当該登録商標を付す商品の品質を保証しなければなりません。当該登録商標の使用商品には被許諾者の名称及び商品の原産地を明記しなければなりません。商標使用許諾の契約は商標局に登録しなければなりません。これらに関する当事者間の具体的運用方法等については「商標使用許諾契約書」に明記しておくことも重要となります。
中国国内での現地法人の商標使用では、権利者自らが中国国内で使用したことにはなりません。したがって、当事者間にライセンス契約があっても契約書自体は単に当事者を拘束するに過ぎず、不使用取消の対象となります。商標局へのライセンス契約の届出は第三者対抗要件であると同時に不使用取消に対する抗弁としての証拠力が生じます。不使用取消を請求されてからの届出では「駆け込み使用」となります。
商標権者が、少なくとも不使用取消の請求前3年以内の使用を立証できなければ取り消されます。したがって、「駆け込み使用」は考慮されません。
中国では、模造品の輸出入を阻止するために、税関での差止めが可能です。 知的財産権の権利者が税関による知的財産権保護を受けようとするとき、まず自分の知的財産権(特許権、商標権)を税関総署に届出する手続を行わなければなりません。権利者又はその代理人が知的財産権侵害の疑いのある商品が輸出入されようとするのを発見した場合、商品の輸出入地の税関に知的財産権保護措置の発動を請求することができます。税関での輸出入の差止めには、権利者が有する情報を事前に税関に提供しておくことが有効です。 税関は、知的財産権の権利者又はその代理人の申請によって、又は税関の職権により、税関総署において届出のあった知的財産権を侵害する疑いのある商品に対する差押えを決定することができます。また、税関は権利侵害の疑いのある商品及び関係状況について、差押えのあった日から15日内に、調査を行わなければなりません。但し、関係当事者が侵害紛争について既に知的財産権の主管部門に処理を求め、又は人民法院に提訴した場合、あるいは犯罪の疑いがあると認めて関係機関(公安局、人民検察院)に調査を移送した場合には税関は調査を行いません。知的財産権の権利侵害が確定した場合に、税関は権利侵害商品を没収し、処罰通知書を荷受人又は発送人に送付します。
商標権の侵害事実がある場合、これを排除するため商標権者は幾つかの法的措置をとることができます。その手段としては、司法手段と行政手段があります。司法手段である人民法院(裁判所)を利用するに際しては、中国での裁判制度は日本とは異なった点も多くあり、中国の裁判制度についてその概略を理解しておくことが必要です。 行政手段としては、地方工商行政管理局(AIC)の利用、地方品質技術監督局(TSB)の利用および税関の利用(商標権の侵害商品に対する水際措置)などが挙げられます。行政手段の措置をとる場合は、侵害に対する差し止め(仮処分)などが早く、費用が安い等のメリットがあります。しかし、損害賠償請求、謝罪広告等の措置をを望む場合は、司法手段によらなければなりません。
権利者が期待する効果によってルートが異なります。 行政ルートは偽物の製造販売行為の差止・偽物商標ラベルの印刷行為の差止、粗悪品質商品・原産地虚偽表示行為の差止、偽物の税関差止などを求めることが対象であり、時間的にもコスト的にも合理的です。ただし、これらによる処罰内容は比較的軽微であり再犯防止の効果が薄いのが実情です。 司法ルートは損害賠償・謝罪広告、侵害者の刑事罰を求めることが対象であり、前者の当事者系の民事訴訟では解決までの時間とコストが必要です。後者の刑事訴訟でもある程度の時間は必要です。課せられる刑事罰も決して重罰とは言えませんし、侵害行為自体が刑罰の基準を満たす必要があります。 一般論として迅速な対応とコストパフォーマンスが期待できる行政ルートの活用が多用されます。
中国で特徴的なことは、製品ごとに大規模な取扱い「市場」が存在します。例えば、化粧品であれば○○市の○○市場など当業者であればこれらの情報は容易に入手できます。これらの○○市場を集中的に調査することで実態把握が可能です。 また、製品・業種別の展示会での調査も効果的です。日本ミシン工業会や全日本文具協会などは関連する展示会の共同見回りなどを実施し、模倣品業者の摘発を行っています。
警告書の有効性は相手方企業と模倣品排出の背景・状況によります。相手方が確信犯であればその有効性は低いでしょう。模倣品対策の方法は本FAQ設問10.をご参照下さい。
(1)模倣品の発生を知らなかった場合 (2)既に模倣品の発生を知っていたが、積極的に品質等の調査は行わなかった場合 (3)既に品質上問題のある模倣品の発生を知っていたが、対応を行わなかった場合
上記いずれの場合でも、模倣品による消費者被害はあくまでも模倣品生産者の責にあり、真正品の製造者による模倣品対策の不作為が中国法制上の責任を問われることはありません。しかしながら、模倣品対策の不作為は以下のような「企業の社会的責任が問われる」ことを考慮しなければなりません。 ①模倣品の生産者名や商標が真正品の生産者名や商標と酷似し、消費者に出所の混同を生じた場合は、当然真正品の生産者に対し消費者クレームが集中し、無用な紛争当事者になることがあり得る。 ②模倣品に対する不作為は「消費者保護」を看過する行為であって、その結果、真正品の商品イメージ(グッドウイル)が破壊され市場性を失うのみならず、企業イメージ自体が損傷する。真正品の生産者がこれを回復するには相当のエネルギーを要することとなる。 また、中国国内での模倣品による健康被害が模倣品排除の不作為によるものであっても日本国内で有責とされることはありません。
著名商標認定のための証明資料の一つとして「関係する公衆の当該商標に対する認知の程度を証明する関連資料」があります。これにはその商品の取引者・需要者・当業者の全てが含まれ、その何れであってもよいこととなっています。認知度が広汎に及ぶほど証明力が高まります。 また、当該案件で著名商標として認定を受ければ、他の案件でも考慮されることとなっています。商標法第13条第2項では、「非類似の商品又は役務について登録出願にかかる商標が、中国で登録された他人の著名商標を複製し、模倣し、または翻訳したものであり、公衆を誤認させ、当該著名商標の所有者の利益に損害を生じるおそれがある場合はその登録を認めず、且つその使用を禁止する」と規定されています。しかしながら、著名商標の効力が全ての商品・役務に及ぶということではありません。基本的には、当分野を核としてその周辺分野までと考えるべきでしょう。著名商標の保護範囲の確認には新たな個別事案で争うしかありません。
著名商標の認定は具体的紛争事案の中で行われます。したがって認定に要する時間は個別の紛争事案の審理期間であり一律ではありません。例えば、異議申立段階での著名商標の認定には現状4年以上は必要です。
そのようなケースは無いとは言えませんが、著名商標の認定制度の導入後まだ日も浅く、日本商標の認定事例も少ないため、ご紹介できる事案は承知しておりません。
OEM製品が専利(特許・実案・意匠)に相当する製品であれば、それらについてOEM生産開始前に中国での権利化が必要となります。当該会社とのOEM生産契約書において細部にわたる合意条項があったとしても、秘密保持の曖昧さ、アウトレットや従業員が退社して模倣品の生産に従事することも考慮しておく必要があります。特に、ノウハウの付随したOEM生産には外部流出に細心の注意しなければなりません。製品によっては、製造工程上に「ブラックボックス」を仕組むことも効果的でしょう。OEM先を信用することと知的財産上の戦略とは別問題です。 商標に関しても、OEM生産とはいえ少なくとも中国国内で一旦当該商品が流通する段階を経ることは間違いありません。ましてや、OEM製品の引取りや第三国への輸出には中国税関を通関します。そうしてみると、中国国内でOEM製品に商標を付する行為を伴っていればOEM元による中国商標権の取得は必要事項です。専利同様第三者によって当該商標を先駆取得されれば打つべき対策はないし権利侵害となります。最悪の場合、商標権者の中国税関での差止めによって、OEM製品が身動きできない状況になるかもしれません。また、当事者の事情によってOEM先の変更を余儀なくされた場合に、旧OEM先は引き続き同種製品の生産活動を続ける可能性もあります。この場合、知的財産権による担保がなければ当該行為の差止めも不可能となります。これらは、法律上の問題ではなく「中国事業展開上のリスクヘッジ戦略」の問題です。